【背景】
乳癌の腫瘍周囲領域は、乳癌の発生や治療のターゲットとなる腫瘍微小環境を反映する可能性がある。腫瘍周囲領域のMRI所見と、乳癌の悪性度と関連に関するさまざまな検討が行われている。
【目的】
乳癌の腫瘍周囲領域のMRI上の特徴と乳癌予後との関連を明らかにすること。
【方法】
2022年10月までに発表された論文のうち、乳癌の腫瘍周囲領域のMRIでの定量的・定性的特徴と予後を検討した研究を対象とし、メタアナリシスを行った。ランダム効果モデルを用い、定性評価については統合オッズ比(OR)、定量評価については標準化平均差(SMD)を算出した 。
【結果】
合計24件の研究(1853例の乳癌予後不良群および2590例のコントロール群)が解析に含まれた。結果として、以下のMRI所見と予後との関連が明らかとなった:
• Peritumoral edema(腫瘍周囲のT2WI高信号域):非ルミナル型乳癌(OR=3.56)、Ki-67高値(OR=3.70)、高組織学的グレード(OR=5.85)、リンパ節転移(OR=2.83)、ホルモン受容体陰性(OR=3.15)、リンパ管侵襲(OR=1.72)と関連 。
• Adjacent vessel sign(腫瘍に隣接する血管の存在):予後不良因子を有する乳癌と関連(OR=2.02) 。
• Peritumor-tumor ADC ratio, peritumoral ADCmean(腫瘍周囲領域のADC):予後不良群で高値を示す(ADC ratio: SMD=0.67、ADCmean: SMD=0.29) 。
【結論】
腫瘍周囲領域のMRI所見(peritumoral edema、adjacent vessel sign、peritumor-tumor ADC ratio、peritumoral ADCmean)は、乳癌の予後不良と有意に関連することが示された。これらの指標は、乳癌の非侵襲的な予後評価に役立つ可能性がある。