【背景】
高濃度乳房はマンモグラフィーの精度に影響するだけでなく、乳がん発症の独立したリスク因子である。このため高濃度乳房を有する女性に対する乳がんスクリーニングの方法に関心が集まっている。スクリーニングに乳房超音波(US)を追加すると、マンモグラフィー単独の場合と比較してスクリーニングによる乳がん検出率を上げ、中間期がんの発生を減らすことはこれまでの研究で示されているが、個々の乳がんリスクに応じてどう結果が異なるかは明らかになっていない。
【目的】
高濃度乳房を有する女性を対象として、USスクリーニングによるがん検出率や偽陽性率が、乳がんリスクに応じてどのように異なるかを評価すること。
【方法】
2014年1月〜2020年10月の期間で24施設におけるUSスクリーニングデータを用いた後ろ向き観察研究。40-74歳の高濃度乳房を有する女性を対象とした。リスク分類にはBCSC version 2 risk modelによる5年間の浸潤性乳がんリスク およびBCSC 6-year advanced breast cancer risk model による6年間の進行乳がんリスクが用いられた。USスクリーニングによるがん検出率、偽陽性率、陽性的中率(PPV3)を主要評価項目とした。
【結果】
34,791件のUSスクリーニングで、がん検出率は1,000件あたり2.0件であった。6年間の進行乳がんリスクで高リスクの女性におけるがん検出率は、低/平均リスクの女性と比べて有意に高く(1,000件あたり5.5件 vs 1.3件、P = .003)、PPV3も高リスク群でより高い結果が得られた(15.0% vs 4.9%、P = .01)。5年間の浸潤性乳がんリスクを用いた場合にも、高リスクの女性におけるがん検出率は、低/平均リスクの女性と比べて有意に高く(それぞれ1,000件あたり3.7件 vs 1.4件、P = .02)、PPV3も高リスク群でより高い結果が得られた(10.5% vs 4.9%、P = .09)。
【結論】
高濃度乳房を有する女性のうち、リスクモデルによる高リスクの女性は低/平均リスクの女性に比べて、USスクリーニングによるがん検出率およびPPV3が増加した。リスクに基づくUSスクリーニングの追加は、がん検出率の向上と偽陽性の減少に役立つ可能性がある。